Facebook Instagram

ShopList

地元生産者・食材

LiV × LiVEs Part7:とまとのまつお〈代表 松尾康司さん、森美穂さん〉

執行 沙恵

LiV × LiVEs  Part7:とまとのまつお〈代表 松尾康司さん、森美穂さん〉

月に一度、さまざまな一次産業に関係する人たちとカウンター越しに語り合うLiV×LiVEs(リヴ×ライブ)。毎月変わる一夜店長。普段なかなか知り合う機会のない彼らが、どんなことを思い、どんな仕事をしているのか、生の声を酒の肴に交流を楽しむイベントです。

 

7回目の店長はとまとのまつお代表松尾康司さんと森美穂さん

7回目の一夜店長はとまとのまつおの代表松尾康司さんと、長年松尾さんをサポートする森美穂さんのお二人です。

福津市のトマト農家の長男として生まれた松尾さん。実家は弟が継ぎ、自身はサラリーマンとなりますが、さまざまな転機と農業への熱い想いから9年前に脱サラして新規就農することに。家業の農家を小さい頃から手伝っていたので全くの素人ではないものの、待ち受けていたのは新規就農者が直面する多くの壁と若手農家が育ちにくい日本の現状。今の日本農業業界の中でどう生き残っていけばいいのか、試行錯誤しながら取組んでいることや、農業に対する想いについて話していただきました。

 

本日のドリンクとつきだし

松尾スペシャル

 

本日のオリジナルドリンクは松尾スペシャル!ノンアルコールバージョンは1年ほどたっぷりミニトマトを漬け込んだ【トマト酢】を炭酸で割り、果肉を潰しながらいただきます。アルコールバージョンはこれをウォッカ、またはジンで割ったもの。

ほんのりただようトマトの香りは爽やかで、潰しながらいただくトマトの果肉は熟成していてまるでジャムのようでした!

まつお万能ソースとアイコのカプレーゼ

 

クリームチーズとトマトのアイコに【まつお万能ソース】をかけていただきます。何にかけても美味しい【まつお万能ソース】と、愛情込めて作られた甘くてフルーティーなアイコにクリームチーズのコラボレーション…美味しくないはずがありません。

気になる万能ソースについては6次産業に取り組んだきっかけとともに後に詳しく触れるのでこうご期待!

 

最強のビジネスパートナー、森 美穂さん

松尾さんといつも一緒にいるので奥さんとよく間違えられるそうです

 

森美穂さんは松尾さんが農業を始めて2年目から勤めている社員さん。「いつも一緒にいるので奥さんと間違えられるんですけど、最強のビジネスパートナーです」と話す松尾さん。この日も松尾さんが話に専念できるようカウンター内の仕事を全て引き受け、ドリンクのオーダーやつきだしの準備をテキパキとこなしていました。

3人の子を育てる森さんはとても料理が上手で、昨年念願かなって福津市に【ナチュラルキッチンもり】をオープン!地産地消にこだわり、昼はホットサンドやワッフル、スムージー、夜は居酒屋メニューやコースなど、幅広く提供しています。季節によっては松尾さんのいちごを使ったフルーツサンドもあるのでぜひホームページをチェックしてみてください!

 

松尾さんのお話

松尾さんはもともと話をするのが好きで人前で話すのも抵抗がないタイプ。飛び交う質問に応えながらいろいろなお話をしてくれました。

 

どうしてトマト栽培?

カウンターの外で話をする松尾さん

 

松尾さんは宗像市と福津市にビニールハウスでトマトといちごを栽培しており、その栽培面積は約6000㎡(6反)。6000㎡というと、イメージ的には小中学校のプール16個分の広さ。結構広い気もするのですが、松尾さんは「6000㎡しか…」といいます。

「既存の親元就農の人たちはその10〜20倍の土地を持っています。新規就農の際、最初は土地を貸してもらうところから始まるんですが、農家の人に2ヶ月も3ヶ月も営業してやっと手に入れたのがこの広さです。遊休農地があると言われますが、土地の持ち主は自分の身体が動くうちは土地を譲ってくれません。ハウスを建てたいなんて言うとあげたも同然ですから、ますますハードルも上がってしまいますし」。

宗像市における新規就農者の中ではトップクラスの面積をもつといえど、新規就農者と親元就農者との間にはスタートから大きな差があるんですね。

「結局、やっと借りることのできた限られた土地では、初期投資の返済や生活があるので、必然的に単価の高いトマトやいちごなどを作る、ということなります」。

 

時代による野菜の価格破壊と追い込まれる農家

話の参考にと準備していただいた資料

 

高単価と言われるトマトやいちごに限らず、一世代前に比べて野菜の値段がかなり安くなっているのが農家にとって大きな問題であるといいます。

「トマトは昔4玉が400円くらいで売られてましたが、今じゃ直売所で160円くらいになっています。つい先日、4玉120円で売られているのを見たときは思わず写真を撮ってしまいました…。衝撃でしばらくドキドキしていましたね、大丈夫なんだろうかと…」。

消費者としてはどこか遠くの国から運ばれてきた野菜よりも地元の季節野菜を食べたいと思うのが本音。けれど、普段私たちの食卓に上がる身近な野菜を作っている地元生産者も今の世代が最後かもしれないといいます。

「今の季節市場に出るナスやキュウリなどの夏野菜も地元の農家さんが作らないと新鮮なものは食べられないんですが、今の市場では値がつかない、作っても利益にならないのが現状です。農家さんにも生活がありますから、利益の出る野菜にシフトするようになります。そうして単価のいい野菜が偏って市場に増えると値段の叩き合いが起こる。高かった単価が下がる。価格が落ちて利益が出なくなる。その野菜が作れなくなる…こういう悪循環が起こっているんです。四季成りの野菜は北海道産や長野産など、地元以外の産地の野菜しか食べられなくなってしまうでしょう」。

直売所で安く売られている野菜たち。消費者としては嬉しいのですが、その裏では「その価格まで下げないと競争に負けて売れ残ってしまう」という生産者の苦渋の想いがありました。一生懸命作ったものが値段に負けて売れない。売れ残りは生産者自らが引き取るルールなので、持ち帰るくらいなら値を叩いて売りつくしたいと思うのは自然なことです。一消費者として考えさせられます。

まじめな話も笑いを交えて話す松尾さん

 

「もともと直売所は良い品質のものが評価されて高く売れる場所でした。ですが今はそこで価格破壊が起こっています。誰でも自分の作ったものを置ける点では、こだわって作ったミニトマトも家の隣の小さな畑で獲れたミニトマトも、同じミニトマトとして並ぶわけです。一方が400円、もう一方が200円だったら消費者がどう思うかというのは容易に想像できますよね。

年金をもらいながら農業をしている年齢の方ならまだしも、若い新規就農者は初期投資を返済しながら就農しています。高く売りたいというよりは、こだわりを正当に評価されたい。それじゃあ標準価格や適性評価とは何なのかという話になってくるんですが、こういう点は漁業の世界と全く同じでしたね。権田さん(※)ともよく話をするんですが、安く売っても生活が成り立つ人たちと同じルートに立ってはいけないんです」。

※権田さん:LiVE×LiVEs Part4に登場した鐘崎の若手漁師さん

 

若手の新規就農者が生き残る道は?

「正当に評価してもらうためには、付加価値やブランディングというところを作っていかなくちゃいけないと思っています。付加価値を消費者に感じてもらうための味や特徴やストーリー…農家一人ひとりが魅力をアピールする努力をしなくちゃいけない。あとは販売戦略です。まずはどうやって目を向けてもらうのか、どうやってリピートにつなげていくのか。

農商工の連携といいますか、自分にできないことはその道のプロにお願いする・聞くということが解決策なのかなと思っています。1の輝きしかないこの商材をどうすれば10できるのかというのを一緒に煮詰めてくれる人を求めて、このような場に立っているのもあります。ドラクエでいうパーティーを組むように、得意分野を持ち寄って一緒にやっていくしかないのかなと思います。」

 

気になる【まつお万能ソース】

英語表記は“スペシャルソース”!

 

松尾さんはトマトの1の輝きを増す試みとして6次産業にも挑戦しています!その一つが、つきだしのカプレーゼにもかかっていた【まつお万能ソース】。フルーツトマトとしいたけ、玉ねぎやごまなどが絶妙なバランスの一品で、お肉や揚げ物、今の季節には冷麺や冷しゃぶにもよく合うそうです。商品化しているものには万能ソースの他にもケチャップやトマトドレッシング、トマトスープやトマトカレーがあります。

加工製造するのは日本に3人しかいない、難関資格フードマスターの称号をもつ菱江 隆氏。日本大使館・領事館料理長に就任していたこともある食のエキスパートです!食の安全・安心・無添加にこだわって生み出されました。

「きっかけは数年前、炎天下で水分調整が難しくなったトマトが割れまくって、200万くらいの損失が出たんです。その割れたトマトで加工品ができないか、相談してことから始まりました」。

農業は自然が相手。水害で沈んでしまえば全滅なんてこともあります。いろいろな知恵を絞り、協力を募り、事業を支える柱を複数もつことも重要なのですね。

松尾さんの商品や菱江氏の詳細についてはぜひホームページ【とまとのまつお】をご覧ください!

製造分野にはフードマスターの菱江 隆氏、とまとのまつおの商品やロゴのデザインはLiVE×LiVEsの企画運営をしている谷口竜平です。できないところは仲間とパーティーを組んで…とはいえ、こんなにジャンルの違う仲間をパーティーに引き入れているとは、やはり松尾さん、只者ではありません…!

 

さいごに

最強コンビでハイチーズ

 

「僕みたいに人前で話すのが好きな人はまだしも、中には職人気質の人もいて、技術は高いけどなかなか光の当たりにくい人ってたくさんいます。そういう人も光の当たるところに出して一緒に高めていけたらと思い、今後はトマトに特化した若手トマト団体を作ろうと考えています。

味は美味しいのに売れない…それは知名度が足りなくてお客さんが商品のイメージをできていないから。なのでそういうところを谷口さんにも協力いただきながら、まずは少人数で始めていこうと思っています。情報を積極的にFacebookで発信しているので、どんなふうにトマトを育てているか、見ていただけたら嬉しいです。」

Facebookはほぼ毎日、トマトの生育の様子や一緒に働くパートさん、社員さんの姿がアップされていますのでぜひフォローしてみてください!
>>とまとのまつおFacebook松尾康司さんFacebook

松尾さん、森さん、ありがとうございました!

 

取材・文・写真:執行沙恵

※この記事は2019年LiVE KiTCHENで毎月開催されていたイベント「LiV×LiVEs」のレポートを転載したものです。

執行 沙恵
記事を書いた人の情報
執行 沙恵
MOKでは主に記事作成を担当。1986年福岡市出身、宗像在住。市民活動・NPOセンタースタッフ兼、フリーでデザイン/ライターも。臨床検査技師として病理検査室に勤務のち、金融機関で4年営業職を経験しコミュニケーション力を鍛える。NPO法人福岡テンジン大学との出会いをきっかけに自分の住む「まち」との関わり方を考えるようになり、縁あって宗像市の市民活動を支援・コーディネートする現職に落ち着く。2020年に息子が生まれ、海の幸、山の幸、自然環境、さらには人の温かさあふれる宗像の魅力をそれまで以上に感じながら育児を楽しんでいる。育児と仕事をバランスよく楽しむ方法を模索中。 B'zファン歴21年。カラオケと猫とスイーツが好き。
Facebook instagram
>一覧に戻る
<

2019.06.30

LiV × LiVEs Part6:しまカフェ〈草野結実/musubi cafe、豊福未紗/フィッシャーマンキッチン、成田由子/エンジニア〉

2019.09.09

LiV × LiVEs Part8:すすき牧場〈代表 薄 一郎さん〉

>