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LiV × LiVEs Part9:宗像 大島の塩爺 河辺健治さん

執行 沙恵

LiV × LiVEs  Part9:宗像 大島の塩爺 河辺健治さん

月に一度、さまざまな一次産業に関係する人たちとカウンター越しに語り合うLiV×LiVEs(リヴ×ライブ)。毎月変わる一夜店長。普段なかなか知り合う機会のない彼らが、どんなことを思い、どんな仕事をしているのか、生の声を酒の肴に交流を楽しむイベントです。

 

9回目の店長は河辺健治さん

塩爺こと河辺健治さん

 

河辺さんは今年で72歳。漁師の家系に生まれ、大島で育ち、子どもを育て、役所に20年勤め、合併する前の大島村の最後の村長でもあり、現在大島の海水で塩を作る塩爺です。
塩を作り始めて10年…ということになっていますが、何年も前から「塩を作り始めて10年」と言い続けているので、正確には何年目かよくわからないとのこと。
「塩爺は頑固でとっつきにくい爺さんらしい」という噂もあるそうですが、実際は美人と巨乳とビキニにめっぽう弱い、なんともおちゃめなおじいちゃんなのです。

 

本日のおしながき

本日のおしながき

 

今回は大島から来てくれた塩爺に、塩爺自身や塩についてのいろいろをお聞きします!
ドリンクは大島の塩を使った「ソルティー大島」。「大島の塩」をつまみに話に花が咲きます。

 

塩を作ったきっかけは?

ソルティー大島と「大島の塩」

 

大島に生まれた河辺さんは高校卒業後、海上保安官として北海道の網走に勤務。巡視船の船長になることを夢見ていましたがその夢は早々に叶わないことがわかってしまいます。4年後に島に戻り、島で1、2を争う漁師だった先祖の跡を継ぎますが、生活と子どもを育てるために20年間公務員となる道を選びます。
その後は議員になり、大島村最後の村長にもなります。
「生活のために公務員をしましたが、公務員の仕事は嫌いでした。何か面白いことをしてやろうという気持ちは今も昔も変わらないですね」
一時食堂をしていた時期もある河辺さん。その食堂には薪ストーブがありました。
「火力が強かったので、鍋に海水を入れて置いていたら塩ができたんです。それが始まりです」
きっかけは単純なものでしたが、それから河辺さんの塩作りが始まります。

 

塩作りについて

とても原始的なつくり方

塩爺を囲んでお話を聞くみなさん

 

塩爺の塩作りはとても原始的。日が昇っている間の12時間、薪を燃やしてひたすら海水をたぎらせるだけ。
「調子がいいと5日でできるけど、雨だったり島の行事があったり、遊んでたりすると10日かかるね」
日の長い夏場はそれだけ長い時間たぎらせることができますが、冬場は少し時間が短くなります。また雨の日は作業ができないので、梅雨の時期などはできる量が減ってしまいます。
それだけの時間火を保つための薪燃料を確保するのが実は大変。薪を割って常に補充するものの、足りないときは海岸沿いで流木を探したり、森に行って倒木をもってきたりしているのだそう。
そうして作られる塩の生産量は平均すると1日1キロ。100リットルの海水をたぎらせてできる塩は20キロ!その割合はたったの2%なんだとか…。
こだわると生産量はもっと減るといいます。

 

真っ白ではない色

塩爺の塩は少し色がついています。黄色っぽかったり赤っぽかったり、色味はできあがりによってさまざま。
色は火加減や窯の様子で変わっているのだといいます。
燃料や火の具合で塩の結晶の具合が微妙に変わるというのもまたおもしろいところ!
海水をゆっくり熱して作ると粒子が大きくなって結晶がキラキラするそう。それを杵でついて細かくしたのが現在販売されている塩です。
ガンガンにたぎらせると粒子が細かくなりますが、味は落ちる気がするそう。
「いつも塩を買いに来てくれるおばちゃんがよく味をわかってくれていて、今回は色が白いねとか、前回のより今回の方が美味しいわとか教えてくれるんよ」

 

どうして原始的な方法で作るの?

談笑中

 

「燃料の薪を探すのも一苦労なら、ガスでやったらいいんじゃないの?」という声が参加者から上がりました。それもそうだ。どうして薪なの?
「ガス代がかかるでしょう。ガスや電気を使うとコストの方が大きくなってしまって採算がとれないんですよ。塩の作り方としては他にもポンプで汲み上げて海水を蒸発させるという方法もあるけど、あれも結局汲み上げるだけの電気代がかかるし、台風が来て壊れでもするとパアだしね」
なるほど。
ときどき「なんでもいいから燃やすものがほしいんでしょう?」と勘違いをしてゴミをもってくる人がいるらしいのですが、燃えないものもあるのでなんでもかんでももってくるのはやめてね、とのことですよ。

 

塩の味の違いってなに?

沖ノ島の水!

 

塩にもいろいろなものがありますが、塩爺が大島の海水から作る「大島の塩」はうまみがあってやわらかく、ただしょっぱい塩とは違って美味しいのです。この味の違いって何なんでしょう?
満月で大潮のときの海水は海藻などの養分も多く含みやすいため、そのタイミングの海水を使った塩というのもあるそうですが、そもそも大島はじめ沖ノ島の素材は神秘的なのだと塩爺はいいます。
「粋工房というガラス工房があるでしょう。不思議なんだけど、ガラスに大島の砂を入れると緑色になるし、沖ノ島の塩を入れると鮮やかな朱色になるんだよ。他のものを入れてもあんな色にはならないのにね」
粋工房で作られるガラスの緑色と朱色が鮮やかだなぁとは思っていましたが、大島や沖ノ島由来の色だったのですね!これにはとても納得。
大島の海水で作った「大島の塩」の他に、沖ノ島の海水で作った「沖ノ島の塩」というのもあるのだそう。これは大島にある小夜島のお土産屋さんにしかない超レア商品なので、手に入れたい方はぜひ大島に足を運んでみてください!

 

取引先とのこと

時折真面目な話も…

 

塩を作り始めて間もなく、取引先がまだそんなになかったころは商品を置かせてもらうのにも苦労したそう。
手数料を売上の49%も取られるようなところに卸したりもしていましたが、最近は少しずつ強気になってこれているそうです。
「最初はどこにいっても断られてましたが、今じゃどこに置いても売れるようになってきたから手数料率の高いところは今後契約を切っていこうと思ってます」
大手お菓子メーカーからも契約の話が来るそうですが、塩爺が頑張って作れる大島の塩は年間400キロ。企業が要求してくる量にとても足りないのでたいてい断っているといいます。
中には大島の塩を材料として買って、それで作った商品に『大島の塩を使った○○です』と勝手にキャッチコピーをつけて売られている商品もあるんだそうです。塩爺には何の断りもなく勝手に「大島の塩」をキャッチコピーにして販売するなんて失礼な話ですね。「大島の塩」を謳いたいなら塩爺に一言声をかけてからにしましょう!

 

これからの豊富

70代はまだ子ども!

女性に囲まれてハーレム状態

 

「今は塩爺だけど、次世代の塩爺が育ったときには自分は塩翁(えんおう)になろうかと。「塩の翁(おきな)」ですね。そして最終的には「塩の聖(ひじり)」、塩聖(えんせい)になりたいと思ってます!」
70代はまだ子どもすぎるから、まず80は超えないと翁にはなれないかなーと笑いながら話す塩爺。
「僕は『塩とともに去りぬ』でいくんです」

 

ライバルがでてくるかも

海水は誰のものでもないし、水分を飛ばせば塩は誰でも作ることができます。そう考えると、同じように大島や沖ノ島の海水を使って塩を作ろうとするライバルが現れてもおかしくはありません。
でも今夜、この塩爺の人柄に触れて実際に大島の塩を味わうと、塩爺が作る塩にこそ価値を感じるし、他に大島の塩という商品ができたとしても塩爺の塩にはかなわないと思うのでした。
ちなみにこの大島の塩を使った塩爺の奥様仕込みのイカの塩辛は抜群に美味しいんだとか!(食べたい!!)
他にも魚の塩干しや味噌や梅干しなど、塩を大量に使う食材ではとてつもない威力を発揮するんだそう!食にこだわる方には特にいろいろ試してもらいたいですね。
塩爺の作る塩は少しずつ認知度が高まって手に入りにくくなっています。なので見つけたときはラッキー!ぜひ一度味わってみてください。

 

取材・文・写真:執行沙恵

※この記事は2019年LiVE KiTCHENで毎月開催されていたイベント「LiV×LiVEs」のレポートを転載したものです。

 

執行 沙恵
記事を書いた人の情報
執行 沙恵
MOKでは主に記事作成を担当。1986年福岡市出身、宗像在住。市民活動・NPOセンタースタッフ兼、フリーでデザイン/ライターも。臨床検査技師として病理検査室に勤務のち、金融機関で4年営業職を経験しコミュニケーション力を鍛える。NPO法人福岡テンジン大学との出会いをきっかけに自分の住む「まち」との関わり方を考えるようになり、縁あって宗像市の市民活動を支援・コーディネートする現職に落ち着く。2020年に息子が生まれ、海の幸、山の幸、自然環境、さらには人の温かさあふれる宗像の魅力をそれまで以上に感じながら育児を楽しんでいる。育児と仕事をバランスよく楽しむ方法を模索中。 B'zファン歴21年。カラオケと猫とスイーツが好き。
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