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2019.02.08
LiV × LiVEs Part1:むなかた鐘崎の海女ちゃん
執行 沙恵
海と山に囲まれた自然の恵み豊かな宗像
宗像には農業や漁業など、自然と共存することを生業とするさまざまな人がいます。元号が変わるこの時代の節目に、彼らはどのように前代の生業を継いでいこうと考えているのでしょうか?
「そんな境遇にいる人たちってぶっちゃげどう思ってるの?」
リアルな現場の声を聞いてみたい!ということで始まりました!
「LiV×LiVEs」(リヴ×ライブ)
ここでは月に一度、LiV KiTCHENを会場としてさまざまな一次産業に関係する人たちとカウンター越しに語り合うことを行っていきます。毎月変わる一夜店長。普段なかなか知り合う機会のない彼らが、どんなことを思い、どんな仕事をしているのか、生の声を酒の肴に交流を楽しむイベントです。
「一夜店長」×「参加者」×「お酒」×「楽しい時間」…
不特定なものの掛け算の中でどんな偶然の産物が生まれるのか!それは来てみてからのお楽しみ♫
本日の一夜店長
第一回目の一夜店長は宗像の海女ちゃん。2018年4月から地域おこし協力隊として宗像市鐘崎で活動しています。
本田さんは滋賀県、林さんは岐阜県と、お二人とも海に面しない県の出身ですが「海が好き!」というのが共通点。「こんにちはー」と挨拶も早々に、もってきたチラシや拾った貝の標本、手作りのシーグラスのランプシェードを「どこに置く?」「ここがいいかな?」と会場レイアウトに取りかかります。わいわいとカウンター内で準備する仲の良い様子は本物の姉妹のようです。
今回は海女ちゃんからのオリジナルメニューとして鐘崎の郷土料理、「のうさば」(鐘崎かずのこともいう)がお通しとして振る舞われました。
のうさばとは、ホシザメを開いて干したものを湯がき、サメ肌を取って味付けをしたもの。これがお酒のつまみにすごく合う!一夜限定カクテル「海女ちゃんブルー」(※)と共に堪能する参加者のみなさん。
※海女ちゃんブルー:日本酒 山の壽(宗像日本酒プロジェクト)をベースにしたカクテルです。
ちなみに手前のお二人の間にぶら下がっているのが調理される前の「のうさば」です。
干されている状態では特に匂いはないです。指で逆さに撫でると「サメ肌!」という感じ。みんな珍しそうに触っていました。
さて、場も温まってきたところで本日のお題。
途中から参加してきた人に「今こんなこと話してるよ」というのがわかるようにボードを準備。でも基本的にはみなさん好きなことを好きなようにお話していました。
残したいものを残していくためには
本田藍さんの場合
本田さんは元はなんと高校の生物の先生!先生がこんなにかわいかったら生物もっと頑張れただろうなぁ。
京都の吉田寮(※)に住んでいた経験があり「歴史あるもの、古いものを残したい」という想いが強くあったそうです。
※吉田寮…京都大学にある日本最古の学生自治寮。
吉田寮がどんなところかわかる記事があったので気になる方はこちらをチェック。
ちなみに、当時吉田寮には有志が「吉田寮畜産業協同組合」というものを運営しており、本田さんも積極的に関わっていたそうです。
「残したい物があっても、本当の意味でそれを残していくためにはただ物だけがあればいいというわけではなくて、たくさんの人の協力のもと”その物を取り巻く文化”も一緒に残していく必要があると思っています」
宗像の鐘崎漁港は海女さん日本発祥の場所。大正時代に150人いた海女は今や60代を超える1人だけになっていました。元から海に憧れがあった本田さんは「海女の文化を残したい」と、自身が海女となりました。漁の最中に海底でゴミを見つけたときは拾うなど、個人でできる環境保全も行っています。2018年夏に宗像市で行われた宗像国際環境100人会議の分科会にも出席して積極的に海の環境のことも勉強し、この夜も熱い想いを語ってくれました。
募集締め切り当日の夜
林由佳理さんの場合
林さんは工場に10年以上勤務し、ヨガのインストラクターと、趣味でサーフィンもしていたそう。スラリと長い手足や身のこなしからも納得!けれど意外に天然のようで、白ワインを頼まれていたのに日本酒を注いでいました。笑
印象的だったのは宗像が地域おこし協力隊として海女を募集している記事を見つけたのが募集締め切り当日の夜、「あと2時間で募集が締め切られる!」というタイミングだったという話。
「迷っている暇はなかったですね。したいことはしよう!と思って必死に申請書に入力しました」と当時の様子を笑いながら話す林さん。全国から9人の応募があった中、見事海女ちゃんに選ばれたのでした。
カウンター越しに盛り上がる店内
店内ではカウンターを挟んでさまざまな話が飛び交っていました。
今の時期は海には潜るの?
「12月までなまこを獲ってましたけど、今は潜るのはお休みですね。次は2月からわかめを獲りますよ」
なまこは海底にいるため深く潜るのだそう。沖ノ島の漁ではベテランの海女さんは20メートルも潜るんですって!生身でそんなに潜れるなんて、すごい。
宗像に来てどう?
「最初はよそ者扱いされるのかな…と不安だったけど、よく来たね!って受け入れてもらえて嬉しかったです」
鐘崎の近所でお世話になっているお宅にお邪魔するとだいたいお酒の洗礼を受けるそう。
「記憶をなくすくらい飲まされるんで、最近気をつけてるんですよー。でも不思議とちゃんと家に帰ってて…ほんともう怖いです!」
笑いながらそう話すのは林さん。完全に宗像の色に染められているようです。笑
潜ってて楽しいなぁって思う瞬間とかありますか?
「魚がかわいかったときとか、でかいあわびがおったときにはうわぁ!ってなります!笑」
「水面に上がって息を吸えた瞬間は『生きてるなぁ!』って思いますね」
お仕事のことでも楽しそうに話してくれるお二人。本当に海女の仕事を楽しんでいる様子がとても印象的でした。
日曜は鐘崎のあまちゃん食堂!
毎週日曜日(第2日曜を除く)は鐘崎の漁業協同組合で海女ちゃん食堂を開いています。サザエカレーや今の時期では季節限定のふぐを使ったかき揚げ丼など、ここでしか味わえない海の幸を堪能できます。海女ちゃんお二人がお出迎えしてくれるので、気になる方はぜひ行ってみてくださいね。
※2020年11月時点、あまちゃん食堂は終了しています。
最後に
「漁に携わるようになって初めて、漁師さんが海の資源を守りながらいろいろなルールの中で漁をしていることを知りました。海のこと、漁のこと、漁師さんのことをもっと知ってもらいたいです」
そう話す二人の海女ちゃん。次の時代を海女ちゃんたちはどう担っていくのでしょうか。
海女の伝統・文化だけでなく、宗像にあるたくさんの文化が今次の時代に受け継がれようとしています。先代の想いや意志を、どう継いでいくのか。それはこれから私たちの手に委ねられています。
取材・文・写真:執行沙恵
※この記事は2019年LiVE KiTCHENで毎月開催されていたイベント「LiV×LiVEs」のレポートを転載したものです。
- 記事を書いた人の情報
- 執行 沙恵
- MOKでは主に記事作成を担当。1986年福岡市出身、宗像在住。市民活動・NPOセンタースタッフ兼、フリーでデザイン/ライターも。臨床検査技師として病理検査室に勤務のち、金融機関で4年営業職を経験しコミュニケーション力を鍛える。NPO法人福岡テンジン大学との出会いをきっかけに自分の住む「まち」との関わり方を考えるようになり、縁あって宗像市の市民活動を支援・コーディネートする現職に落ち着く。2020年に息子が生まれ、海の幸、山の幸、自然環境、さらには人の温かさあふれる宗像の魅力をそれまで以上に感じながら育児を楽しんでいる。育児と仕事をバランスよく楽しむ方法を模索中。 B'zファン歴21年。カラオケと猫とスイーツが好き。